「先行量産型ショートストーリー」

下に置いてるのは、このコンテンツが始まる前、かたぎやさんの掲示板を
間借りして一番最初にうpされたショートストーリー。
この二人を軸に話を進めていく予定が、何時の間にやら
すっかり影が薄くなってたり。
そんなこんなで、かなり前のSSですが、一応コッチにも
置いとこうと思い立ちました。


  さして広くも無い会場は、ある種異様な熱気に包まれていた。
観客は熱心にスポットライトに照らされた四角いマットを見つめ、次の
瞬間を待ちわびていた。時刻はすでに深夜を回っている。
 リングアナと思しき女性が、マイクを持って高らかに叫んだ。
「AWWF深夜特別興行、セミ・ファイナル時間無制限一本勝負 山村咲美VS相羽魅優を行います。
青コーナーより、相羽魅優選手入場!」
歓声が、リングに響き渡った。
 リングサイドに設けられた実況席では、ビデオ用の実況が収録されている。
若手の実況者が、説明的な台詞を吹きこんでいた。

「さて、セミファイナルは注目の一戦、元タッグチームの対戦です。
先日、発展的解消という事でタッグを解散した両選手、解散後初顔合わせ!
有る意味、貧乳VS巨乳の代理戦争と言ってもおかしくないこの対決。
解説のマナさん、どうですか?」
 横に座っている、苦虫を噛み潰したような顔+メッチャ不機嫌そうな顔÷2
といった風体の女性は、ただただ黙ってたたずんでいる。実況は慣れた風で
気にせず話を続けた。
「成るほど、対戦成績は四勝一敗二分けと圧倒的に山村咲美が勝ち越していますが
最近の相羽魅優は、スタミナが増して更に粘り強くなっていると。
何より今回は深夜興行なので、何が起こるか解らないと言う訳ですね?」
 コクリと頷く解説。ボソッと呟いた。
「一波乱」
 それを聞いて実況が目を丸くする。
「おーーーーっと、マナさんの口から重大発言がポロっと噴出したぁ。
相変らずマササイトーさん並みにガチ発言のすくつではない巣窟!もっとも
我々には何が起こるかサッパリ解りませんっ!」
 勝手に盛り上がっている実況席を余所に、選手は二人ともリングに登場し
気の早い紙テープを千切りながら選手紹介を受けていた。
「青コーナー110パウンドォ〜ッ相羽魅優〜!」
 リング中央に出て、ぺこり、とお辞儀をする。リングウェアの上に着込んだ
メイド衣装を思わせるエプロンドレスの胸元が、ぷるんっと揺れた。
魅優のリンコスカラーである薄いペールグリーンの紙テープが大量に舞い飛ぶ。
 肩まで伸びたクセの有る黒髪が、顔を左右から包み込み、可愛い人形のような
印象を受ける。俗に言うタヌキ顔に、タレ目ぎみの潤んだ瞳。街で見かけても
誰もレスラーとは思わない、大人しそうな印象が全身から醸し出されている。
 156cmの身長はジュニアヘビーだが、自己主張の激しい巨大なバストは
ヘビー級と影で言われる。この、アンバランスなボディに童顔、甘いロリ声が
拍車をかけ、人気はトップクラスに高い。もっとも、この団体最大の売りである
「デスマッチルール」での試合経験が皆無で、その辺りが評価として割り引かれている感は有った。
「続きまして、赤コーナー、108パウンドォ〜ッ、山村咲〜美〜!」
 コーナーポストに駆け上ると、元気一杯に片手を突き上げる。先程より
心持少ない、純白の紙テープが乱舞した。
 栗色のサラサラ髪。顔つきは魅優と同じタヌキ顔だが、勝気な瞳と
健康そうな頬の色が元気なスポーツ少女といった印象を受ける。
相羽と同じく、ジュニアヘビーだが、更に2cm程低い。ちなみに胸は20cm程
“ちっちゃい”。ガウンもジャケットも着ずハイレグ気味の白いリングウェアのまま
入退場するあっけらかんとした性格は、その外観とあいまって一部
好事家の熱狂的なファンがついている選手だ。
「デスマッチルール」でもバンバン試合し、観客を喜ばせている。
そう言った意味で、深夜興行での評価は高い。
 今回のセミ・ファイナルに、この二人の試合を組んだ事が何を意味するか?
観客は固唾を飲んで見守っていた。

 選手紹介が終わると、突然魅優がマイクを握った。
「咲美ちゃんっ話があるの!」
場違いなロリータボイスがリングに響く。観客の中に相好を崩す輩が続出した。
 訝しげに、マイクを持たない咲美が「なんだよー」と観客に聞こえる様、大声を上げる。
キッとした表情で、魅優が叫んだ。
「試合形式をデスマッチルールに変更したいの!」
 この瞬間、咲美でなく観衆と実況がどよめきを上げた。
「驚きました、山村咲美に対し、相羽魅優自らデスマッチ要求!
しかしこの試合形式、エロ技なら何をやってもいいという深夜興行限定
スペシャルルールです。全く経験が無い魅優には、つらい戦いが待ってませんか?
マナさん」
 首を横に振る解説者。実況がやや有って驚いた顔をする。
「なっ、それはどういう意味な・・」
「みてろ」
ぶっきらぼうな解説の反応に馴れている筈の実況は何も言わずにリングへと向き直った。
 中央でにらみ合っている二人。選択肢を振られた咲美は、複雑な顔をしていた。
「魅優、止めた方が良いよ。向いてないと思うんだけど・・・」
「負けるのが怖いんでしょ!」
魅優の挑発も、元の声が声だけに迫力が無い。だが、内容は咲美をカチンとさせるのに十分だった。
 魅優の策に、咲美はいとも簡単に引っ掛かった。
「な・ん・だ・と・ぉ〜っ シングル負け越してるくせいにぃ」
ここぞとばかりに魅優の声が響く。
「ここ二試合は一勝一分けじゃない!私の方が上ねっ!」
「泣いて後悔しても知らないぞっ!良いよ、デスマッチルールで完勝してやろうじゃんっ」
総てを悟った場内のボルテージが、明らかに跳ね上がった。
 慌ててリングアナが説明を入れる。
「魅優選手の要求を咲美選手が受け入れた為、セミファイナルの試合形式は
特別興行限定、デスマッチルールへ変更と成ります!」
 歓声が場内に響く。デスマッチ形式未経験者の魅優が、善戦する可能性は無い。
咲美の手によるドミネーションの期待が、場内に否応無く広まった。
 紙テープが片付けられ、レフリーチェック、ゴングが鳴るまでの何かが高まっていく一時。
観客の期待する視線を尻目に、先ほどまでと微妙に違う表情をした魅優が衣装を脱ぎ捨てる。
視線が集中し、そこに居る全員が息を飲んだ。
 胸の谷間を強調するメッシュで出来たスリット、光を反射する一つ一つのシワ。
160cm無い彼女の足を長く魅せる際立ったハイレグ。
ムチムチした魅優の肢体を黒のボンデージが包み込み、天井のカクテル光線を反射して、キラキラと
輝いていた。
 魅優のリングウェアは、元々咲美と同じデザインで、色が違うだけである。
常に新人らしい初々しさが漂う、キュートなコスチュームだった。
それが今、全く正反対に妖艶な魅力をたたえるボンデージを着こなしている。
 元々グラマラスな彼女のボディに、このコスチュームはぴったりフィットし、ハナから
こういったスタイルのレスラー、といった雰囲気が漂っていた。
 服に合わせて性格も着替えたかのように底意地の悪い笑みを浮かべながら、魅優はリングアナから
マイクを引ったくる。周囲を見渡し、あっけに取られたままの全員に向かって高飛車に語り掛けた。
「驚いてる様ですわねっ。わたくし、今後はバンシー・サマラと一緒に暴れまわる予定ですのっ!
ベビーフェイスはもう沢山。これからは念願のヒールとして、正規軍をぶっ潰しますわよっ
そうそう、これからはわたくしの事は相羽、等と呼ばず“リリス魅優”と呼んで下さいましっ!」
 漸くその使命を思い出したかのように、堰を切って実況がまくし立てる。
「驚愕、驚き、なんと言っても良いのですが、ベビーフェイスの代名詞、相羽魅優が
まさかのヒール転向宣言。ロンリーウルフのサマラと、ヒール軍団結成を宣言しました。
マナさん、驚きましたね!」
解説、淡々と一言。「名前も」
「そうです、それに伴ってリングネームも相羽からリリスに変更を宣言。何より
たどたどしかった愛らしいマイクアピールが一転、全く違ったお嬢様口調といいますか、独特の
慇懃無礼な語り口を、毒気を、会場全体に振りまいております!」
観衆に明らかな驚きの色が見え、ざわめきが静かに広がっていく。が、再び魅優が喋り出すと
雰囲気に飲まれて、再び静まり返った。
「今日は軽い肩慣らしも兼ねて、昔組んでた貧乳レスラーをデスマッチの血祭りに上げて
御覧に入れますわ。ま、無い乳見ても嬉しくないでしょうけど、其処は我慢あそばせっ」
 高笑いしながら場外にマイクを投げ捨てる。合わせたように咲美が叫んだ。
「ふざけんなぁっ、けっちょんけちょんにして、泣かしちゃるっ」
 咲美の声に生気を取り戻したかの如く、歓声が場内に戻った。咲美が勝っても魅優が勝っても
どちらかがデスマッチルール相応しい結末を迎える。自分の嗜好に有った結末を迎える様、切なる
観客の願いが声援となって場内を席巻した。雰囲気の高まりに、レフリーが慌ててゴングを
要請する。
「カーンッ!」
 時間無制限のデスマッチが幕を開けた。
咲美は赤コーナーからダッシュで飛び出すと、勢いを付けて思いっきりラリアートをブチ当てた。
魅優はガードすべく構えようとしたが、勢いに圧されてモロに食らって吹っ飛ぶ。
「フォールッ」そのまま強引に、片エビ固めに入った。レフリーがカウントに入る間も無く
今度は覆い被さった咲美が悲鳴を上げる。腕を切り返した魅優のアームロックが咲美の腕を
捻り上げていた。咲美は魅優の腹部にエルボーを落とすと、腕のフックが甘くなった隙に
強引に振り解いて起き上がる。腹部を気にしつつも魅優は俊敏に体を起こしたが、膝立ちのまま
右腕を振り抜いた咲美のラリアートが喉元へめり込み、絡み合う様にマットに倒れた。
 咲美は魅優にまたがると、豊満な胸元目掛けエルボーを連打する。エルボーを受けながらも
魅優はアマレスの要領で強引に体勢を入れ替え、咲美へお返しのパンチを降らせた。
二人は打撃で張り合いながら、マットの上をゴロゴロ転がる。「おおっ」という歓声が響いた。
 早い展開に、場内は最初からボルテージが上がっている。実況もテンション上がりっぱなしだ。
「何から何まで驚きっぱなしの特別試合!怒りに任せた咲美の突貫ファイトを、何と
アームロックで切り返した魅優。負けん気の強い咲美との意地の張合いでも、互角の勝負を
繰り広げています。外見性格に続いて、ファイトスタイルまで大きく変りました。
おっと、ここでロープに魅優の背中が触れたぁ。ブレイク、レフリーが二人を分けます」
 レフリーが二人を分けようとする。ロープを背に立ち上がった魅優と咲美の間に入り、咲美を
引き離そうとしたが、咲美はレフリーを乱暴に押し退けた。
 「パチーンッ」という音がリングに響く。ロープを背に身動きできない魅優の胸元に、
咲美の強烈な逆水平チョップが炸裂した。思わずロープにもたれ掛かった魅優へ、更に逆水平が
叩きこまれる。巧妙に、斜め下から打ち上げる咲美のチョップは、魅優の巨大な胸を跳ね上げ
一撃の度に、タプンタプンッと大きなうねりを見せた。
 魅優の甘い悲鳴が場内に響く。観客は「デス・マッチルール」を解っている咲美の
「期待に応える攻め」に声援を送った。敏感な部分に繰り出された連撃にグロッキー気味の
魅優は、両腕だけでロープに引っ掛かったような状態に成っている。
「たぁっ」という咲美の声と共に、すくい上げるような8発目のチョップがおっぱいの一番高い
ぷっくりした突起に打ち込まれると、魅優は張り付けになっていたロープからズルズルと崩れ落ちた。
観客の声が驚きに変化する。次なる展開を予測した場内に、地鳴りの様な反響が響き渡った。
「んじゃっ、落とすぞぉ〜」
 咲美は利き腕をブンブン振りながら、観客にアピールする。
「咲美の極めに行く宣言が出たぁ!対魅優戦四勝の内、三勝はスリーパーからの失神KO。
宣言後にマット上でねちっこく繰り広げられるスリーパーは、ツームストンパイルドライバーと
並んで魅優が咲美から食らってはいけない技の一つ。過去何度も繰り返えしたリプレイを見るかの
ように、グラウンドの裸絞め地獄で、再び魅優はヘブンズドアをくぐってしまうのかぁ!」
 実況の声と共に盛り上がっている歓声を背に、咲美は魅優の横へ仁王立ちした。
胸元を抱き抱える様にして呻いている魅優を見下ろすと、髪を掴んで強引に引き起こす。
そのままリング中央に引きずろうとした咲美の腕を、魅優が跳ね除けた。
 ボグッという水枕を叩いたような鈍い音が、リングサイドの辺りにだけ響く。
「ゲフッ」っという、咳とも呻き声ともつかない、絞り出すような声も重なる。
魅優の右腕が、無防備な咲美の鳩尾に深々とめり込んでいた。最前列の観客には咲美の
口から違う色の唾液が吹き飛び、マットに四散したのがはっきり見える。
咲美がゆっくり傾いていき、膝立ちの魅優に引っ掛かると、そのまま斜めに崩れ落ちた。
 自分達が知っている魅優と全く違うラフな攻撃に、観衆からどよめきが起きる。
魅優はふてぶてしく笑いながら咲美の髪を鷲掴みにして、自分に引き寄せた。
 咲美は鳩尾を押えながら呻いている。観衆を焦らす様、ゆっくり咲美の頭を持ち上げると
喉元に魅優の腕が素早く巻きつき、強烈に絞め上げた。
「スリーパーホールドォッ!まさかの裸絞めが咲美を絞め上げたぁっ。魅優の意趣返し
掟破りの輪廻地獄が炸裂!このまま落してしまうのかぁ?」
 実況はそう言いつつ、慌てて解説者を振返る。
「それにしてもココまで組み立てが変ると驚きです。相羽魅優といえば、テクニシャン。
相手の技を最大限受け流し、一瞬の丸め込みで勝つという切り返し技が最大の武器。
酷な言い方をすれば、目立った決め技が無い、特徴の無いレスラーなんですが・・・」
 それまでは、振られるまで黙っていた解説者が、唐突に自分から語り出した。
「魅優は元々、打撃とグラウンドについては出来る子。でも、それじゃ受けない。
弱さを売りにして、咲美と対照を成した方が面白い。これ、現場責任者の売り方。名言」
「なんと、それでは今日魅優が繰り出した技の数々は、元々持ち技で使ってなかっただけと?」
「ん」
解説の頷きを、実況は目を丸くしながら見つめた。
 魅優の絞め技は咲美をじわじわと攻め込んで行く。耐えている咲美の耳元で魅優が囁いた。
「絞め落すのは簡単だけど、そう易々と失神させませんわよ。これまでわたくしが
オトされた分、徹底的にいたぶって、ノシを付けてお返しして差し上げますから」
サディステイックな笑みを浮べた魅優は、更に腕を絞り込む。
首輪の様に喉元へと巻きついた腕は、咲美が失神する寸前、ギリギリの絞めを的確に続けた。
「チョークチョーク、反則だ魅優!」
 レフリーが魅優の腕に手を掛ける。魅優は煩わしげに見上げると、背中をレフリーに向け
更に攻め続けた。
「1−2−3−4・・・」
レフリーのカウントを4まで聞き届けると、サッと両腕を離し技を解く。
カウントが止まった次の瞬間には、再び両腕が咲美に巻きついた。ねちっこい攻めは咲美の
スリーパー地獄を彷彿とさせる。が、今度は絞める腕の内側に咲美の左腕が入りこみ、キッチリと
決まらなかった。魅優は舌打ちして強引に絞めようとする。咲美は必死にブロックしたまま
右腕でエルボーを連打した。脇腹にエルボーを叩き込まれ、魅優の締め付けが止まる。
間隙を縫って、咲美は魅優の背後に回りこむと、全く同じ技を極めた。実況の大声が響く。
「あーっと、一瞬の早業っ本家スリーパー地獄が魅優に決まったぁ!」
 小さく咳き込みながら、咲美は魅優の喉元を絞め上げる。
「あたしをいたぶるだとぉ?いい気に成ってるんじゃないっ。結局今日もいつもの通り、魅優が
オチちゃってお終いよ!・・・本当の裸絞めを、タップリ味あわせてあげるからっ」
 魅優の喉元へ腕が食い込んでいく。本来なら反則として扱われる筈のチョーク気味の絞めも、
レフリーのチェックを巧妙にかわしそのまま続けた。スリーパーを使い慣れている
咲美だからこそ出来る芸当だった。完璧に極まったスリーパーは、魅優のスタミナをどんどん
奪っていく。顔が朱に染まり、荒い呼吸が響いた。魅優は腕をロープに伸ばし、必死に
ブレイクしようとする。普段の咲美なら、魅優を落すまで逃がす事無く絞め続けられたろうが
ココまで受けたダメージは、魅優の足掻きを押え切れなかった。震える魅優の手が
サードロープに掛かる。
「ロープ、魅優の手がロープにかかったぁ ブレイクです!だが追い討ちが出ないっ
咲美もぐったりと突っ伏したままだぁ」
 実況の声に合せたように、場内からため息が漏れた。魅優はロープに腕を絡めたまま
突っ伏して荒い呼吸を繰り返している。咲美もブレイクを許してしまい、緊張が
途切れたのだろう。それまでの疲労が一気に表に出、腹ばいのまま動かない。
 徐々に高まる観客の声援に応えるかのように、二人は同時に、ゆっくり立ちあがる。
ダンッと、気合を入れるようにリングを踏みしめると、咲美は魅優に掴みかかった。
腕を取り、そのままロープに投げる。未だふら付いていた魅優は、されるがままにロープから
跳ね返った。咲美は大またにダッシュすると体をひねる様に飛び上がり、右足を
魅優目掛け振り下ろした。咲美の足が肩口にヒットし、魅優がコーナーへ吹き飛ぶ。
 フライングニールキックが綺麗に決った。手応えを感じた咲美はすぐさま立ち上がると
倒れたままの魅優を確認し、コーナーポストへ掛け上がる。
「いくよーっ!」
 咲美は観衆を煽ると、フライングボディアタックを決めるべく、動かない魅優めがけ跳躍した。
次の瞬間には素早く転がった魅優の姿が視界に入り、間を置かず誰も居ないマットが目に入る。
“しまった!”という思いとボディへの衝撃が、同時に咲美を駆け巡った。
かはっ!っという咲美の声と、バンッという鈍い音が場内に響く。それでも、魅優の反撃を
避けるべくそのまま場外にエスケープしたのは、咲美の生存本能が成せる技だった。
 咲美は場外の薄いマットレス上で、仰向けのまま呼吸を整える。魅優の追撃が無い事に
ホッとしながら、スタミナの回復を待ちつつゆっくり上半身を起こす。
「お起ちなさい咲美っ」
 振返るとエプロンサイド上から、荒い息をした魅優が咲美を見下ろしていた。
咲美は体勢を立て直すべく立ちあがる。魅優は空中戦が出来ない、まだ距離が有る、と
思っていた彼女に向って、魅優が助走を付けて飛び上がった。
 予想外の行動に、咲美は全く反応出来なかった。勢いを付けた魅優が大股開きで咲美に激突する。
弾力の有る魅優のヒップが咲美の胸元で弾け、二人は一塊と成ってコンクリートの床に倒れこんだ。
魅優の意表を突いたフライングヒップアタックは、見事に咲美を捕らえた。
咲美は倒れた衝撃で背中をしたたかに打つ。魅優の重みに肺が圧迫され、息が詰まった。
「行きますわよぉ〜っ」
 魅優は腰に手をやりながら観客を煽りつつ立ち上がる。
リングサイドで助走距離を取ると再び高く飛び上がって咲美目掛け降って来た。
「ズンッ」という腹に響く音が響く。
距離を測った魅優のヒップが、パンチ、自爆と、ダメージを受けている咲美の腹に
めり込んでいた。
 “ハッ”という音と共に、咲美の息が体外に押し出される。
咲美の目に涙が滲み、身をよじる様にして腹部を押えた。魅優も咲美の腹から降りると、
座った姿勢で手を付いたまま肩で息をしている。腰を気にしているその様子は
これまで体験した事が無い、飛び技が自身に与えるダメージの洗礼を初めて受けた
所為だった。それでも、悪態を付く事は忘れない。
「どうかしら、私の飛び技、ピーチフラッシャーのお味は?まだまだ、終わらせないですわよ」
そう言いつつ手を伸ばす。動きが止まっている咲美を引っ掴んで強引に起こすと
鉄柵目掛けホイップしようとしたが、咲美の手がしっかりしがみ付いて離れない。
 咲美を投げようと反動をつけた魅優は体勢を入れ返られ、倍の反動を付けて
咲美に鉄柵へと投げられてしまった。ガシャンという音と共に、鉄柵が大きく揺れる。
魅優は鉄柵の太い枠に背骨を強打し、「きゃうっ!」という場違いな悲鳴を上げた。
 一旦は膝から崩れ落ちた咲美が、腹部を押えながらもヨロヨロと鉄柵に近寄って来る。
ヒップアタックのダメージにスタミナを大きく消耗した所為か、全身汗を流しながらも
その闘争心は衰えていない。
 腰を押えてもがく魅優に、そのまま、またがる。
慌てて体を入れ替えようとした魅優の小さめな顎を両手でフックし、強烈に捻り上げた。
魅優の口から先程とは違う、漏れるような悲鳴が響く。
上半身総てが反り返るような強烈なキャメルクラッチが、魅優の背骨を粉砕しようとしていた。
 ロープブレイクも無く、通常ルールでも場外20カウントが無い完全決着制。掛けた側か
掛けられた側が外す以外、この地獄が終る事は無い。咲美の場外での拷問技に、それが
見えない外周の客は大騒ぎし、リングサイドはキャメルクラッチのエグイ角度に
どよめきを上げる。荒い息をしながら咲美が吐き掛けた。
「簡単に失神しないでよ。まだまだ終わらせないんでしょっ?」
 逃れ様が無いストレッチ技が魅優を追い込んで行く。魅優の漏れ出る悲鳴は途切れ途切れ
になり、今は咲美に同調するかのような、荒い息が出るだけに成っていた。
リングサイドに、二つの、荒く濡れた呼吸音が密やかに流れる。
力を込めて踏ん張った咲美のリングシューズが立てる“キュッ”という軋みが時折混ざり
呼吸音の二重奏にアクセントを付けた。
 咲美が唐突に技を解く。直角に反り上がっていた魅優の上半身が、パタリと床に崩れた。
汗がキラキラ光りつつ宙を舞う。汗まみれの胸が弾みながらコンクリートに
接触すると、黒い染みが瞬時にコンクリの上を侵食していった。
魅優は半ば失神したように、うつ伏せになったまま肩で息をしている。
暫くの間、場内に空白が流れ、二つの荒い息が歓声にかき消された。
 呼吸を整えた咲美がそろそろと立ち上がる。目ざとい観客は咲美の両脇に、魅優の黒光りする
リングシューズを見出した。魅優の両足を抱え込んだまま、咲美の体が斜め後ろに反り返る。
半瞬置いて魅優の絶叫が場内に響き渡った。
 「場外で逆エビ反り固めぇっ?ウォール・オブ・ジェリコとも呼ばれる、スタンド状態での
逆エビ固め、咲美の極め技の一つが場外で炸裂。キャメルクラッチに続き、魅優の
背骨を集中攻撃だぁ!エロ技有り、深夜興行限定デスマッチルールの筈が、場内では
二人の受肉したヴァルキリーによる全力のぶつかり合い、全霊を傾けた真なるハルマゲドンが
繰り広げられています」
 実況の声が響く。
「それにしても凄まじい消耗戦が展開しています。自爆した咲美に、魅優のピーチフラッシャー
という新技、いわゆるヒップアタックがヒット。更にダメージを受けていた咲美の腹部に
ピーチフラッシャーが当たった時には、完全に魅優の勝利かと思いましたが、鉄柵ホイップが
裏目に蛇足。一気に形成逆転され、今はただもだえ苦しむのみ。魅優の地獄の責め苦を
終わらせるのは、慈悲深い失神という名の神だけかぁっ?」
 横で解説も首肯する。
「場外で関節は、ガチ」
 場外で繰り広げられる拷問を一目見ようと、見えない観客が前へと押し出し、観客席でも
混乱が起きていた。そんな事を気にする余裕も無く、咲美は逆エビ反り固めで
ますます魅優の腰に負担を掛けていく。魅優の悲鳴はかすれ気味となり、脂汗がコンクリの上に
描き出した地図は既に大きな大陸と成っていた。甘く切無い悲鳴はある種官能的に響き、
聞こえた者達の耳朶と下半身を熱くする。技の受けには定評が有った魅優だが、無限に続くかとも
思えるサブミッションは、その意志を挫き、気力を雲散霧消させていた。
「ギブ・・・ギブアップッギブアップですわっ・・・もう、これ以上は」
 耐えかねた右手が激しくタップされ、震える唇から押し殺した声が漏れた。
咲美はそれを聞くと魅優の両足をしっかり抱え直し、更に深く体を傾けた!
魅優のタップが突然止まり、堪えるべく食いしばった歯から歯軋りするような軋みが漏れる。
「場外でのギブ・アップなんてルールはないよっ!地獄から逃れたいなら、お・ち・て・ね!」
咲美は、最後の「ね」に合わせて力の篭った笑いを浮かべると上半身を右に捻り、魅優の背骨に
トドメの圧迫を加える。
 必死に堪えていた魅優が、一際大きな悲鳴を上げた。ギリギリまで粘った上で、プライドを
捨てて発したギブアップが無意味だと解った事は、何より大きなダメージとして彼女の上に
降りかかった。軟骨がひしゃげるようなピリピリした感覚と、背骨自体が砕けて行くような
鈍い痛み、そして逃れる術が何も無いという認めたくない絶望感。
 魅優は徐々に頭の中が真っ白に成っていく感覚を覚え、悔しさが込み上げた。
いつもの、裸絞めで絞め落される時に感じる“あの感覚”。自分がオトされて行く事を
はっきり自覚しながら魅優の意識は混濁していった。“悔しいのに・・・あぁ・・・”
 かくん、と魅優の頭が落る。半瞬置いて、抵抗していた両足がグニャっと力を無くした。
抱えた両足が反発を無くした事で、踏ん張っていた咲美はバランスを崩しかける。
背中越しに振り返り、ようやく魅優が失神した事に気付いた。
咲美は手応えの無くなった魅優の足をそのまま放り出すと、自らも脱力したかの様に
鉄柵へと持たれて、弛緩した魅優の体を見下ろした。
 前列の観衆がその様子を見て、大きくどよめく。打ち寄せる波の様に反応が連鎖し
どよめきが反響していった。場外での拷問技から失神KO。観客の期待した結果とは微妙に違うが
その熱戦は十分に、観客を喜ばせるの内容であった。勝者を称える歓声が、ジワジワ響き始める。
 終わったと思い込んでいる観客に向って、咲美はリングを指差し疲れた声を張り上げた。
「まだまだぁ、トドメはマットの上で付けるよっ!!」
そう言うと、両手をフックして上下に振って見せる。アピールを理解した観衆から
「うおおおおぉぉ!」と、更なる絶叫が響いた。
 大きな黒い染みの上にうつ伏せに倒れて身動きしない魅優を、咲美はゆっくり引き起こす。
力無く持ち上がる魅優の体は、肉そのものの重さを、消耗しきった咲美に伝えた。
 魅優の肩を抱き起こす様にリングに上げる。サードロープの下から押込むと、魅優の体が
重く転がった。咲美は、マットに足をかけると、自らも転がってリングに戻る。
 ダメージと絞め技を掛け続けた所為で、咲美のスタミナは大きく消耗していた。
が、観客の声援には、大きく見栄を切る。客が見たいと望む物を見せるのが彼女の仕事だ。
 KOチェックをすべく魅優に近寄ったレフリーを押し退けると、リングに上げられた時のまま
全く動かない魅優を持ち上げ、一番見栄えのするリング中央に引きずっていく。
観衆のボルテージは上りつめる様に上がっていった。
 周囲を見渡しアピールを決めると、咲美は魅優の頭を自分の太モモで軽く挟みこむ。
ムチムチとした魅優の体にメリハリを付けている、くびれたウエストに横合いから
腕を巻きつけ、しっかりフックした。
 会場の興奮が最高潮に達するタイミングを計って、魅優の体を振り子の様に持ち上げる。
一本の柱の様に、二人の体が一つに重なった。
 ・・・会場内に、ひときわ大きなどよめきが起こる。
「ロングバトルも遂に終局!グラウンドでの何時果てるとも知れない裸絞め合戦から
ド迫力の空中戦を経て、遂にっ」
観客のボルテージと張り合う様に、実況の絶叫が響き渡った。
「遂に咲美が魅優をがっちり抱えこんだぁ!一撃必殺ツームストンっ出るのかぁっ!」
 全員の視線が向かうスポットライトの中央には、最高潮を迎えようとしている
二つの熱気がぶつかり合っている。
「はぁっ!」
 絞り出すような声と共に、二つの人影は一つの大きな杭へと、姿を変えた。
軽くふらつきながらも、咲美はしっかりと魅優を抱きかかえる。
 咲美の、ハイレグぎみなリングウェアは、これまでの熱闘を物語るかのごとく
しっとりと汗で濡れ細っていた。布地の所為か汗の所為か、リンクウェアは
艶かしい光沢を放っている。魅優のボンデージ風ウェアも同様に濡れていた。
二人の体から滴り落ちた汗が、マットの上で弾け、幾重にも広がっている。
 股間の布地越しに魅優の熱い吐息を感じつつ、咲美は最後の一撃を放った。
「フィニーシュッ!」
ドスンッという鈍い音がリングにこだまする。
「決まったぁーっ ツームストン・パイルドライバーッ!!」
リングから響く衝撃音に、実況のかすれた大声と観客の歓声が混ざり合い、
再びリングを包み込んだ。
 抱え込んだ腕に魅優の重みを衝撃として感じ、咲美はそのズッシリした手応えに勝利を確信する。
やや有って、魅優がマットに倒れ込むズシンッという音がリングの咲美にだけ聞こえた。
膝立ちの状態で、マットへ大の字に成った魅優を見届けると、咲美は崩れる様に
そのまま覆い被さった。
「フォールゥッ」
 咲美はレフリーに絶叫したつもりだったが、自分でも驚くほどか細い声が
歓声にかき消されただけだった。
それでも、レフリーは咲美の視線を察し、カウントに入る。
「咲美、全身でフォールに入ったぁ。カウントワンッツーッ・・・」
 実況の声を何処か遠くで聞いているような感覚を覚えつつ、咲美は魅優の太ももを
申し訳程度に押えこんだ左腕と、太ももから魅優の股間へ混ざり合って流れる二人の
汗をぼんやり眺めた。
 後はゴングが乱打されて・・・レフリーに右腕を引き起こされて・・・
腕、重いなぁ・・・関節技、もらい過ぎたかな・・・3カウントまだ・・・?
 このままスゥッと、気を失う様に眠ってしまいそうな瞬間。それほどにハードな
消耗戦だった・・・。
「!」 全身を貫く衝撃に、咲美は現実に引き戻された。
気が付くとレフリーはカウントを止め、咲美の横に屈み込んでいる。
「咲美、ギブアップ?」
 咲美は混乱しつつも慌てて首を横に振った。場内は、これまでと全く別のどよめきに包まれている。
周囲を見渡そうとして、体が上手く動かない事に気付く。組み従えていた筈の魅優の太ももは
眼下に無く、咲美の両腕をフルネルソンぎみにしっかりと固めていた。
「あーっっ、サブミッションっ!フォールに行った咲美を、魅優の絞め技が襲ったぁっ
カウント2まで行った時は決まったと思いましたが、まさかの逆転!エンドレスバトルは
再び無限地獄の回廊へと歩を進めていくのかぁ!!」
 解説の絶叫も耳に入らず振りほどこうともがく咲美に、疲労を隠しきれない魅優の声が、精一杯
毒々しく響いた。
「くだらない変な意地を張るから、アッサリ逆転される事になるんですわ。折角気付けて
貰ったんですから、お礼も兼ねてじっくり弄んだ後、同じ目に合わせて差し上げますわよ!」
 咲美が背後から聞こえたその声の意味を理解する間も無く、全く別の感覚が下半身を被う。
しっとりと篭った熱気に覆われている股間に、冷たい空気が通り抜けた。それまでと全く違う感覚に
咲美は驚き、もがく。股間を守っていた生地は、右尻の上に引き上げられていた。
伸縮するハイレグの生地が筋となって1箇所に食いこみ、弾力の有るお尻の上でぷっくりと
二つの小山を作る。リングウェア全体が引っ張られ、胸元のカップまで
下の方にずり下げられた格好に成っていた。
 少ない生地とは言え、それまで彼女「自身」を守っていたリングウェアが無くなり
咲美は言い様の無い不安感に身をよじろうとする。が、両足を魅優の腕に抱えられていて
動く事もまま成らない。観客は、左右によじるムチムチした咲美のナマ尻に熱狂した。
 何かを期待している熱い視線が、咲美の恥ずかしさに火を注ぐ。咲美の顔は羞恥心で
真っ赤に火照った。
「ひゃっ!」
 衆人環視の渦から逃れるべく、足を利用してもがいていた咲美の秘所に、今度は
熱い息が掛かる。フルネルソン風に体を固められて状況を確認する事が出来ず、不安に腰を
強張らせた咲美の股間を魅優の熱い舌が舐め上げていった。
「ふあぁぁぁ」
 驚くほど甘い声を響かせ、咲美の抵抗が一瞬止まる。
魅優は勝ち誇った笑みを漏らすと、音を立て、責め立てるように咲美の秘所を舐めまわした。
舌の立てるピチャ、ピチュッという密やかな音と、懸命に押えようとする咲美の喘ぎ声が
静まり返ったリング上にを支配する。躰の底から突き上げてくる淫靡な感情をねじ伏せながら
咲美は漸く声を絞り出した。
「レフリーっ、反則っは・・はんそくぅ!」
 反則カウントを取って貰い一旦ブレイク出来れば、リング下にエスケープして体勢を
立て直す事が出来る。咲美はその一心で、必死にアピールする。
咲美の囁くような声に答えたのは、レフリーの反則カウントでなく、地獄のような甘い響きだった。
「今日は何でも有りのデスマッチルールですわよ。お忘れ?」
 魅優の声に、咲美は呆然とした。確かにゴング前、魅優の要求でルール変更したのだ。
デスマッチルールをやった事が無い魅優が、そんな提案をしたのを訝しがっていたのに・・・。
 咲美は、すっぽり抜け落ちた様に忘れていた自分を呪った。そんな咲美の様子を楽しむ様に
魅優は、再び「デスマッチルールのグラウンド技」で咲美をいたぶり始めた。
急所を知り尽くした舌が、緩急を付け咲美のウイークポイントを的確に突く。攻められる度、咲美の
口は密やかな吐息を漏らし、体に小波が走り、秘所は秘蜜を溢れさせた。
「ひっ! はぁっ 嫌っ いやぁ・・・」
 体を強張らせたまま、途切れ途切れに咲美の吐息が響く。何かを期待するかのようなその息は
荒々しくも密やかにリング上に響き渡った。咲美は自分の中で荒れ狂う歓喜の嵐を押え切れなく
なっていた。魅優の攻めの度、歓喜に打ち震える荒馬は、咲美の理性という手綱を振り解いて
快感の蒼き草原を思う様駆け巡ろうともがいている・・・。
「どう、私の攻めは?なんならギブアップしても良くてよ」
 返答を解った上で、魅優の意地悪そうな声が響く。「ノー・・・」咲美は自らを押さえ、必死に
拒絶した。
50センチも離れていない目の前にロープが有る。咲美は、魅優の足にしっかり固められた
左手をジワジワ伸ばし、腰が抜けた様に力が入らない膝で必死にロープエスケイプしようともがく。
 口元を自らのよだれと咲美の愛液で濡らしながら、魅優は淫靡な笑みを漏らした。
「あら、ロープエスケイプしたいんですの?」
そう言うと、それまで咲美の両腕をしっかり固めていた足のフックを外し、ボディシザースに
移行する。
「さ、頑張ってみたらいかが?もう、無駄だと思いますけど」
 内なる自分を見透かしているような声を背に、弄ばれている屈辱に唇を噛み締めながら
咲美は必死に震える手を伸ばす。
その様子を意地の悪く見やりながら、魅優は攻めを再開した。
「いくらエスケープしようとしても、出来ない筈ですわ。何故なら・・・」
咲美の秘裂に掠める様に舌を這わせる。
「貴方の躰は私の舌に酔って、逝ってしまいたい願望が狂おしく突き上げているのだから」
魅優の吐息が秘裂を火照らせ、蜜が止めど無く、涌き出る様に溢れ出した。
「あはぁっ」
くぐもった声と共に、ロープに伸ばした腕が力無くマットに落ちる。咲美は理性の手綱が
引き千切られた事を、全身で感じた。今は、歓喜の虜となった荒馬が自分の中を疾走している。
そう、もっと攻めて欲しい。快感の渦の中、真っ白になりたい・・・。
 咲美は、相手の技に耐えている様に歯を食いしばったまま、腕で顔を覆った。
 聞こえるか聞こえないかのか細い声が、魅優の聴覚を刺激する。
「・・・もっと、アソコに・・・お願い・・・」
リングの上。二人だけの勝者と敗者。レフリーや観客にとって、試合はまだ続いているが
二人にとっての試合は、この瞬間、終了のゴングが鳴った。
 観客には、魅優が咲美の腰をよりがっちり固め、フィニッシュに持ちこむべく
引き寄せた様に見えた。既に決着がついている二人にとっては、別の意味を持つ行為だったが。
 勝者は、いとおしそうに泉から涌き出た勝利の美酒を飲むと、観客にとっての試合を
成立させる為に勝ち誇った表情を浮かべた。
「では、そろそろ引導を渡して差し上げますわ・・・覚悟おしっ!」
 一際引き締まった声を響かせると、魅優はエンターテナーとしての続きを始める。
 自らの愛液と魅優の愛撫で艶やかな光を反射させているクリトリスを、ゆっくりと
舐め上げた。
「!!」
 かすれ気味にこだます咲美の声を満足げに聞きながら、魅優は攻めの手を緩めず
鮮やかな色合いの肉ひだを二度、三度、甘噛みした。
「噛みぃ・・駄目ぇ!」
肉ひだに包まれた秘裂から、秘蜜がほとばしる。
「噛みつき攻撃でヌレヌレなんて、咲美はラフ攻撃がお好きなのね」
咲美の秘裂から出た蜜を舐めながら、魅優は言葉での攻めも忘れない。
「違・・・ひあぁぁ」
 泣き出しそうな咲美の声に、魅優の嗜虐心は心地よく刺激され、彼女を恍惚とさせた。
「それじゃ、そろそろフィニッシュですわよ!」
咲美の足をロックしていた右腕を外すと、人差し指と中指を、愛液が光る秘裂にめり込ませる。
既に二人の体液でトロトロの秘所は、二本の指を難なく咥え込んだ。
「ひゃうっ!ふあぁぁ!!」
何処か満足げな咲美の声がこだまし、呼応するように秘裂と指の隙間から蜜が滲む。
観客も「何か」が終局に向って居る事を敏感に察し、渦巻くような「落せ!」コールが
会場を埋め尽くした。
 魅優は「落せ」コールに合わせ、指で秘裂をかき回す。咲美の中で確実に何かが
高まり、熱狂は魅優の指を強烈に絞めつけた。魅優の意識した声がリングに響く。
「逝かせてあげますわ!落ちなさいっ!!」
 魅優は秘裂の締め付けをこじ開ける様に、更に奥へと指をねじ込むと、充血して秘蜜が滴る
クリトリスへ噛みついた。
「ふぁっ・あぁぁあっ!」
 一瞬、弾かれた様に咲美の体が痙攣した。ピク!という動きの後、咲美の体は力無く魅優の
上に崩れ落ちる。一瞬の沈黙の後、レフリーが屈み込み、即座に立ち上がってゴングを要請した。
「カンカンカンカンカン・・・・」
 場内に歓声とどよめきが響き渡り、連打されるゴングが、隙間を縫う様に響き渡った。
 実況も興奮してまくし立てている。
「落ちた、落ちた、オトしたぁ〜!相羽魅優、デスマッチルールで山村咲美を失神KO!
ヒールに転向後、咲美から初勝利っ。新たなタフネス・デスマッチクイーンの誕生だぁっ!」
 飛び交う紙テープの中、弛緩した肉の重みでしかない咲美を押し退け、魅優は胸を張って
レフリーに掲げられた右腕を天に伸ばす。
 周囲の歓声に適当に応えながら、魅優の視線はマット上に力無く横たわる咲美を見つめていた。
無意識の内に自らのボディを抱きしめる。ハッキリそれと解るように、乳首が豊かな胸の上で
自己主張し、全身をサワ立てている興奮を余す所無く伝えていく・・・。
 魅優は、この攻めで相手を落した時に必ず味わえる至福の重みを全身で思い出しながら、自らの
股間を熱い蜜で濡らしていた。

:END


マンドクサイから、('A`)ノ文章イラネ

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